一年の計は元旦にあり
とはよくいったもので、年明けはまさに何か
新しいことを始めるのに最適な、
意志力がフル充電された時期と言えます。
きっちり仕事をおさめ安堵の息をもらした人も、
やり残しが気になり今度こそはと息巻いている人も、
人間の脳は時間的な区切りに
特別な意味づけをするようできています。
(→締め切り前効果)
ドラゴンボールで、大事な決戦前に悟空たちが
精神と時の部屋で修業しパワーアップしたように、
フローに入って次々に重要な仕事を終わらせ、
スキルを鍛え上げることは可能でしょうか?
(ドラゴンボール完全版25巻より)
ここでは一年の始まりにふさわしく、
-
生産性を高め欲しい結果を達成する方法
-
新しい習慣を効率よくインストールする方法
についてお話しします。
マルチタスキングでバリバリ仕事をこなす先輩。
研修医になりたてのころ、憧れたものです。
しかし、脳科学的にはマルチタスキングは実は
効率的な戦略とはいえないようです。
おどろくべきことに、現代人の注意持続時間は
たった8秒しかなく、金魚にも劣るという
驚きの研究報告があります。
http://time.com/3858309/attention-spans-goldfish/
また、一般的に、集中力が一度途切れると、
それを取り戻すのになんと20分以上もかかる
という別の研究結果もあります。
マルチタスキングでは頻繁にフォーカスがずれるため、
集中力の不要な簡単な仕事ならまだしも、本当に
重要で決断力(=意志力)が必要なタスクには、
実際のところ適していないのです。
医師のキャリアにおける生産性の高い仕事とは?
細かい雑用をすばやく華麗にこなすことではなく、
自尊心を満たしてくれる、すなわちMissionに
のっとった成果のことを指します。
研究職なら研究および論文執筆、
教育者ならレクチャーやセミナーの準備、
臨床家ならスキルの修得などなど。
目指すスキルやステージによってさまざまです。
人生という限られた時間において、優先して取り組む
2つの基準をあえてあげるとするならば、
- 得意、楽しい、情熱を注げる、対価を得られる
- カラダ、あたま、キモチを充電できる
これらを満たすものがいわゆるMissionや
Core Valueに近く、同時に生産性の高い仕事を
意味すると感じています。
さて、生産性の高い仕事がどういうものなのか
自分の中ではっきりとしたら、次はそれらを
どのように毎日の習慣としておこなうかです。
そのためには、次の2つのステップが重要です。
- 自分に打ち勝つ=内面の環境デザイン
- 集中して行動する=外的な環境デザイン
生産性を上げるための環境デザイン
生物にとって環境を変えることは、
リスクの大きい冒険を意味します。
内的でも外的でも、環境を変えようとすると、
恒常性(ホメオスタシス)による引き戻し現象で、
非常に居心地の悪い感覚を覚えるでしょう。
三日坊主ということばがありますが、
新しいもの好きの脳は最初の数日はやる気を
維持できるものの、いざ習慣化させようとすると、
お得意のホメオスタシスを存分に発揮して、
やらない理由を探し始めます。
これを脳による引き戻し現象と呼びます。
ではどのようにして脳をダマして、
すなわち意志力を使って、新しい環境を
作り上げるのでしょうか?
内面の環境デザイン
内的成功は必ず外的成功に先立つ
何かを成し遂げるには強固な基礎が重要です。
ここでいう基礎とは、カラダ、あたま、ココロ、
すなわち自分自身を形作っているものです。
これらのメンテナンスを優先することが、
何よりも大きな飛躍への近道です。
内面の環境デザインとは、すなわち
「自己を整える」
ということに他なりません。
常に高いパフォーマンスでアウトプット
を保つには、自分自身と向き合い、
自分自身のエネルギーの源泉を知り、
情熱をかたむけ、そして人の役に立つ
ということが非常に重要です。
そんな自分自身を構成する要素を整え、
鍛え、エネルギーを充電して若さを
保ち続けるための習慣を紹介します。
絶対時間(エンペラータイム)に若返りルーティーンでエネルギーをリチャージする
朝イチの1時間、ココロとカラダを整えます。
朝イチは意志力で溢れているエンペラータイム。
この自己コントロールの絶対時間ともいうべき
最もエネルギーのあふれる時をムダに
浪費してしまうのはもったいない。
絶対にしてはならないのは、メールチェック、
SNSのブラウジング、テレビをつけること。
メールは他人のアジェンダをダウンロードする行為。
SNSやニュースは不用意に感情を動かされるので、
感情エネルギーを大きく浪費・奪われかねません。
さて、若返りルーティーンの具体的な内容ですが、
カラダリチャージ:最低20分運動し心拍数を上げる
あたまリチャージ:瞑想、読書など
ココロリチャージ:音楽を聴く、アート、趣味など
重要なのは、毎日できそうなことを選ぶこと。
好きなこと、気軽にできることを中心にしましょう。
カラダリチャージでは、心拍数が上がることが
キモチをポジティブにする意味でも重要です。
心拍数を上げる運動をするとうつ病になりにくい
というのは有名な話ですし、ココロとカラダは
つながっていますので、カラダを戦闘態勢にすれば
ココロも前向きになります。
オススメはHIIT(High Intensity Interval Training)
を20分ほどすることです。
無料の7分間HIITアプリもたくさんありますので、
自分にあったものを探してみましょう。
自重でもできますし、これといった器具がなくても
気軽に始められるのが利点です。
その他のオススメとしては、トランポリンです。
一人用、部屋用のトランポリンはアマゾンや
オモチャ屋で簡単に手に入れることができます。
どのような運動メニューにするかは、Youtubeで
気軽に検索してみてください。
ジョギングやランニングもお手軽にできますが、
この場合はやはりHigh Intensity Intervalの手法で、
緩急をつけて走ることをオススメします。
例えば、ジョグ3分、ダッシュ(all-out)30秒を、5セットほど。
具体的にはwebで情報を得られますが、こと運動学においては
英語のページの方が信頼性の高い情報が多い印象です。
あたまリチャージでは、マインドセットを
ダウンロードします。10-20分ほど時間をとります。
左右の書の読書やお気に入りのポッドキャストなどを
聞くのがオススメです。
読書の場合は、見出しから読みたい内容を見つけ、
その項目のみにフォーカスする方法がオススメです。
その場合、10分など短い時間の制限をもうけ、
読書後に何がポイントだったのか録音したり
ブログなどに書き留めると効果的に脳にインプットできます。
ネガティブな内容や感情を大きく揺さぶられる内容の
読書はエネルギーを奪われるので避けます。
オススメの書籍は
- 7つの習慣
- 人を動かす
- 道は開ける
などの良書です。
これらのマインドセットを完全インストール
できるまで毎日ダウンロードし、その内容を
実際の行動に移すことが重要です。
ココロリチャージでは、主にアートなどを用いて
感情を整えます。
好きな音楽を聞いたり、趣味に没頭したり。
オススメは冥想(Meditation)です。
瞑想のポイントは、ポジティブな感情を
活性化させることにあります。
いわゆる禅の発想とは違います。
楽しい時の思い出、自分や周りの人への感謝、
望んでいる未来などを思い描きます。
これらは、自分のエネルギーの源泉となります。
3つのリチャージはお互いにミックスされていてもOKです。
自分流の若返りルーティーンは見つかりましたか?
とにもかくにも、まずはやってみることをオススメします。
私はHIITアプリと、ストレッチしながらの冥想から始めました。
外的な環境デザイン
さて、若返りルーティーンで自己充電が完了したら、
次はいよいよ実際に生産性の高い仕事を始めます。
7つの習慣にもあるように、生産性の高い仕事の優先度は:
重要度が高くかつ緊急度が低いこと
自分のミッションにあった仕事の中でも、
特に重要度が高く緊急度が低いものに
優先的に時間を割くようにします。
経済学的には機会費用と呼ばれる概念で
Opportunity Costというものがあります。
投資家・資産家のWarren Buffettが投資の際に
重視していることでも有名な概念です。
時間、すなわち自分の命を投資した際に、
得られる最大の対価と、それ以外の選択肢で
得られる対価との差益を指します。
ここでいう対価は必ずしもお金ではなく、
自分の人生・キャリアを豊かにしてくれる何か、
例えば自尊心(Self-esteem)、新しいスキルなどです。
特に医師は仕事がら、緊急性の高いタスクに重点を
おきがちなので要注意です。
長期的に人生やキャリアを豊かにしてくれる
ことを少しずつでも毎日継続できた場合、
10年、20年先に大きな差ができます。
未来から逆算して何をするべきなのか
という視点で投資対象を選定する癖をつけましょう。
さて、何をやるべきか目標は定まりましたか?
次のステップは、集中力を維持する工夫です。
簡単にFlow (あるいはZone)に入れる人は
苦労しませんが、なかなかそうはいきません。
Flow/Zoneに興味のある方は、以下の
Harvard Business Reviewの記事をオススメします。
(→精神と時の部屋に入る – Flow/Zoneへの入り口)
Pomodoro法を4セットで2時間のエンペラータイムを演出
人の集中力には限界があります。
1時間程度が相場でしょうか。
Pomodoro法はトマト型キッチンタイマーを
使った有名な集中法です。
アプリもあるので、本物のキッチンタイマーを
用意しなくても大丈夫です。
この方法のポイントは、25分タスクをこなして
5分の休憩をはさむ、というサイクルを
繰り返すことにあります。
脳に適度な休息を与えられるので、
集中力が維持しやすくなります。
4サイクルで2時間ですので、
だいたいこれを目安にします。
複利の原則が人生を豊かにする
こうして計画を立ててみると、タスク終了まで
3時間ほどかかりますが、そんなに時間がない、
という人も多いかと思います。
そんな場合は1−2時間に短縮してもいいと思います。
ポイントは、内面・外的環境デザインの時間配分は
なるべくそのまま(1:2)に行うことです。
毎日時間通り完璧なスケジュールで行うよりも、
毎日少しずつでも必ず行うことの方が重要です。
毎日行うことで、効率化が進み、より早くできます。
生産性に関わるタスクでは、何時間やったか、
よりもどのくらい成果をあげたのか、という
成果主義の方がうまく行くことが多いです。
そして成果主義の場合、毎日の積み重ねにより
スキルが向上しますので、のちのち複利が
働き始め、より大きな成果につながります。
そして毎日行うことで、習慣化し、
「頑張ってルーティーンをやるぞ」
という意志力を消費しなくなってきます。
こうすることで、効率化して利用できる
時間を増やすと、さらに新しい習慣を
取り入れやすくなり、様々なスキルを
インストールすることができます。
7つの習慣の著者のSteven Coveyが言ったように、
セルフマネジメントがよりよい時間の使い方を生み、
高い生産性を引き出すエネルギーの源泉となるのです。
タイムマネジメントはすなわちセルフマネジメントである